夏の食欲不振は、多くの場合、夏バテによる、一過性のものですが、中には、その背後に、医療機関での治療が必要な、何らかの「病気」が隠れている可能性もあります。単なる夏バテと、危険な病気のサインを、見分けるための、いくつかの注意すべきポイントを知っておくことが、大切です。まず、食欲不振の「期間」と「程度」です。夏バテによる食欲不振は、通常、生活習慣の改善や、涼しくなるにつれて、徐々に回復していきます。しかし、「2週間以上、ほとんど食事が摂れない状態が続く」あるいは、「水分さえも、受け付けない」といった場合は、注意が必要です。特に、それに伴って、「明らかな体重減少」が見られる場合は、胃や、大腸、膵臓などの、消化器系の病気(胃炎、胃潰瘍、あるいは悪性腫瘍など)の可能性も、考えなければなりません。次に、食欲不振以外の、「伴う症状」です。もし、食欲不振に加えて、「強い腹痛」「嘔吐」「下痢(特に血便)」「38度以上の高熱」といった、急性の症状がある場合は、食中毒などの「感染性胃腸炎」や、虫垂炎、胆嚢炎といった、外科的な治療が必要な病気の可能性があります。また、「胸やけ」「みぞおちの痛み」が強い場合は、「逆流性食道炎」や「胃潰瘍」が、疑われます。さらに、全身の倦怠感が、異常に強く、体を動かすのも億劫で、気分の落ち込みや、不眠、興味の喪失といった、精神的な症状を伴う場合は、「うつ病」の身体症状として、食欲不振が現れている可能性も、十分に考えられます。夏バテの症状と、うつ病の症状は、非常に似ているため、鑑別が重要です。これらのように、食欲不振が、長期間続く、程度がひどい、あるいは、他の気になる症状を伴う場合は、「夏バテだから仕方ない」と、自己判断で放置せず、必ず、内科や、消化器内科、あるいは、心療内科といった、医療機関を受診し、専門医の診察を受けるようにしてください。
食欲不振に隠された危険な病気のサイン