地域医療機関・健康施設の紹介とレビュー

2025年9月
  • 痛む場所で考える、上腹部の痛み

    医療

    腹痛の原因を探る上で最も重要な手がかりの一つが「痛みの場所」です。お腹の中には様々な臓器が収まっており、痛む場所によってどの臓器に異常が起きているのかをある程度推測することができます。まずお腹の上の方、いわゆる「みぞおち(心窩部)」が痛む場合です。ここには胃や十二指腸、膵臓などがあります。キリキリとした痛みやシクシクとした痛みが空腹時や食後に現れる場合は、「急性胃炎」や「胃潰瘍・十二指腸潰瘍」の可能性があります。また脂っこい食事の後などに、みぞおちから背中にかけて突き抜けるような激痛が起こり吐き気を伴う場合は、「急性膵炎」を強く疑う必要があります。これは重症化すると命に関わる病気です。次に「右上腹部」が痛む場合。ここには肝臓や胆嚢があります。特に食後に、右上腹部から右肩にかけて差し込むような激しい痛みが起こる場合は、「胆石発作」や「胆嚢炎」が考えられます。胆石が胆嚢の出口に詰まることで激しい痛みを引き起こすのです。発熱や黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)を伴うこともあります。そして「左上腹部」が痛む場合。ここには脾臓や膵臓の尾部、胃の一部などがありますが、この場所に限定した痛みを引き起こす病気は比較的稀です。しかし急性膵炎では左側に痛みが強く出ることもあります。これらの上腹部の痛みを専門的に診断・治療するのは、「消化器内科」または「胃腸科」です。胃カメラや腹部超音波検査、CT検査、血液検査などを組み合わせて原因を特定し、適切な治療を行います。ただし忘れてはならないのが、心臓の病気である「心筋梗塞」も胸の痛みではなく、みぞおちの痛みや吐き気として発症することがあるという点です。冷や汗や息苦しさを伴う場合は、循環器内科への受診も視野に入れる必要があります。

  • 食欲不振に隠された危険な病気のサイン

    知識

    夏の食欲不振は、多くの場合、夏バテによる、一過性のものですが、中には、その背後に、医療機関での治療が必要な、何らかの「病気」が隠れている可能性もあります。単なる夏バテと、危険な病気のサインを、見分けるための、いくつかの注意すべきポイントを知っておくことが、大切です。まず、食欲不振の「期間」と「程度」です。夏バテによる食欲不振は、通常、生活習慣の改善や、涼しくなるにつれて、徐々に回復していきます。しかし、「2週間以上、ほとんど食事が摂れない状態が続く」あるいは、「水分さえも、受け付けない」といった場合は、注意が必要です。特に、それに伴って、「明らかな体重減少」が見られる場合は、胃や、大腸、膵臓などの、消化器系の病気(胃炎、胃潰瘍、あるいは悪性腫瘍など)の可能性も、考えなければなりません。次に、食欲不振以外の、「伴う症状」です。もし、食欲不振に加えて、「強い腹痛」「嘔吐」「下痢(特に血便)」「38度以上の高熱」といった、急性の症状がある場合は、食中毒などの「感染性胃腸炎」や、虫垂炎、胆嚢炎といった、外科的な治療が必要な病気の可能性があります。また、「胸やけ」「みぞおちの痛み」が強い場合は、「逆流性食道炎」や「胃潰瘍」が、疑われます。さらに、全身の倦怠感が、異常に強く、体を動かすのも億劫で、気分の落ち込みや、不眠、興味の喪失といった、精神的な症状を伴う場合は、「うつ病」の身体症状として、食欲不振が現れている可能性も、十分に考えられます。夏バテの症状と、うつ病の症状は、非常に似ているため、鑑別が重要です。これらのように、食欲不振が、長期間続く、程度がひどい、あるいは、他の気になる症状を伴う場合は、「夏バテだから仕方ない」と、自己判断で放置せず、必ず、内科や、消化器内科、あるいは、心療内科といった、医療機関を受診し、専門医の診察を受けるようにしてください。

  • 口内炎と発熱で病院へ、何科を受診するのがベストか

    医療

    大人が、口内炎と発熱という、二つの症状に同時に見舞われた時、どの診療科を受診するのが、最も適切なのでしょうか。原因が、ウイルス感染症から、全身性の難病まで、多岐にわたるため、最初の診療科選びは、非常に重要です。受診すべき診療科は、口内炎の「場所」や「数」、そして、発熱以外の「伴う症状」によって、判断するのが良いでしょう。まず、口内炎が、喉の奥の方に集中しており、つばを飲み込むのがつらい「嚥下痛」が、主な症状である場合。この場合は、喉の専門家である「耳鼻咽喉科」が、最も適しています。耳鼻咽喉科医は、ファイバースコープなどを用いて、喉の奥の状態を詳細に観察し、ヘルパンギーナや、扁桃炎といった、喉の病気を、正確に診断することができます。次に、口内炎が、歯茎や、唇の裏、頬の粘膜といった、口の中全体に、広範囲に広がっている場合。特に、歯茎の強い腫れや、出血を伴う場合は、歯と、その周りの組織の専門家である「歯科口腔外科」が、非常に頼りになります。ヘルペス性歯肉口内炎などの診断と治療を、専門的に行います。また、口内炎と共に、手足など、口以外の「皮膚」にも、発疹や水ぶくれが出ている場合は、手足口病や、ベーチェット病、あるいは薬疹などの可能性を考え、皮膚症状の専門家である「皮膚科」の受診が、鑑別診断の助けとなります。そして、特定の局所症状が突出しているわけではなく、「高熱や、全身の倦怠感、関節痛といった、全身症状が強い」場合。あるいは、どの科に行けばよいか、全く見当がつかない場合は、まず、かかりつけの「一般内科」を、最初の窓口とするのが、最も安心で、スムーズです。内科医は、総合的な視点から、全身の状態を評価し、必要な初期検査(血液検査など)を行い、診断への道筋をつけてくれます。そして、もし、より専門的な治療が必要だと判断されれば、責任を持って、リウマチ科や、耳鼻咽喉科といった、最適な専門科へと、紹介してくれます。

  • 食欲がない時の水分補給、何をどう飲むべきか

    生活

    夏の体調不良、特に、食欲不振に陥った時に、食事以上に、生命維持の観点から、重要となるのが、適切な「水分補給」です。食欲がない時は、食事から摂取できる水分量も、大幅に減少するため、意識的に、飲み物から水分を摂る必要があります。しかし、ただやみくもに、水をがぶ飲みすれば良い、というわけではありません。何を、どのように飲むかが、非常に重要になります。まず、基本となる飲み物は、「水」または、カフェインを含まない「麦茶」です。これらは、胃腸に負担をかけず、体にスムーズに吸収されます。飲む際のポイントは、「喉が渇く前」に、「こまめに、少しずつ」飲むことです。一度に大量に飲むと、胃液が薄まって、消化能力を、さらに低下させてしまう可能性があります。コップ一杯(150~200ml)程度を、1~2時間おきに、飲む習慣をつけましょう。そして、もう一つ、非常に重要なのが、水分と共に、汗で失われた「ミネラル(電解質)」も、補給するという視点です。食事が十分に摂れていない時は、食べ物から摂取できるはずの、塩分(ナトリウム)や、カリウムも、不足しがちです。このような状態で、水だけを大量に飲むと、体内のミネラル濃度が、さらに薄まってしまい、「低ナトリウム血症」という、危険な状態(水中毒)を引き起こす可能性があります。だるさや、頭痛、吐き気といった症状は、この低ナトリウム血症のサインかもしれません。したがって、食事がほとんど摂れず、汗を多くかいている時には、水やお茶だけでなく、「経口補水液」や「スポーツドリンク」を、上手に活用することが、推奨されます。これらは、水分と、ナトリウム、カリウム、そして、水分の吸収を助ける糖分が、バランス良く配合されています。また、温かい「味噌汁」や「スープ」も、水分と塩分を、同時に補給できる、優れた飲み物です。特に、味噌汁の上澄みは、食欲が全くない時でも、比較的飲みやすく、栄養補給にもなります。梅干しを、白湯に溶かして飲む「梅湯」も、クエン酸による疲労回復効果と、塩分補給が期待できる、日本の伝統的な知恵です。