ヘルパンギーナは、非常に感染力が強いウイルス性疾患です。家庭内に、一人でも発症者が出ると、高い確率で、他の家族にも感染が広がります。特に、子どもが保育園などからもらってきたウイルスが、看病する親にうつってしまう、という「家庭内感染」は、大人がヘルパンギーナにかかる、最も一般的なシナリオです。ヘルパンギーナの原因となるエンテロウイルス属のウイルスは、主に3つの経路で、人から人へと感染します。第一の経路が「飛沫感染」です。感染者の咳やくしゃみ、会話などで飛び散る、ウイルスを含んだしぶき(飛沫)を、周りの人が鼻や口から吸い込むことで感染します。病気の初期、特に発熱や喉の痛みがある時期に、このリスクは高まります。第二の経路が「接触感染」です。感染者が触れたドアノブや、おもちゃ、タオルなどにウイルスが付着し、それを別の人が手で触れ、その手で自分の目や鼻、口を触ることによって、ウイルスが体内へ侵入します。そして、第三の、そして最も厄介な経路が「糞口感染(ふんこうかんせん)」です。感染者の便(うんち)の中には、大量のウイルスが排出されます。症状がすっかり治った後でも、ウイルスは便の中から、数週間にわたって排出され続けるのです。子どものおむつ交換の際に、処理をする親の手にウイルスが付着し、その手から感染が成立するケースは、非常に多いです。もちろん、この逆のパターン、すなわち、大人が先に感染し、子どもにうつしてしまう可能性も、十分にあり得ます。症状が重く出やすい大人が、無理をして出勤したりすると、職場や、公共交通機関で、知らず知らずのうちに、感染を広げてしまう危険性もあります。ヘルパンギーナの感染力は、症状がある急性期が最も強いですが、回復後も、しばらくは感染源となる可能性がある、ということを、常に念頭に置いておく必要があります。家庭内、そして社会での感染拡大を防ぐためには、後述する、基本的な感染対策を、家族全員で、徹底して実践することが、何よりも重要となります。