女性が「胸が痛い」と感じた時、その原因は必ずしも心臓にあるとは限りません。実際、循環器内科を受診する女性の胸の痛みの多くは、心臓以外の臓器や組織に起因するものです。不安を煽る心臓病のイメージに惑わされず、その他の可能性について知っておくことは、冷静な判断と適切な診療科選択に繋がります。女性に多く見られ、胸の痛みを引き起こす代表的な原因の一つが「逆流性食道炎」です。胃酸が食道に逆流することで、食道の粘膜が炎症を起こし、胸の中央あたりに焼けるような痛み(胸焼け)を感じます。特に、食後や、前かがみになった時、横になった時に症状が悪化するのが特徴です。この場合、相談すべきは「消化器内科」です。次に、突然チクチク、ピリピリとした鋭い痛みが走る場合は、「肋間神経痛」が考えられます。肋骨に沿って走る神経が、何らかの原因で刺激されることで起こる痛みで、深呼吸や咳、体をひねる動作で痛みが誘発されることがよくあります。ストレスや疲労、不自然な姿勢が引き金となることも多く、主な診療科は「整形外科」になります。また、女性特有の要因として「乳腺症」も挙げられます。これは、女性ホルモンのバランスの乱れによって乳腺が変化し、胸の張りや痛み、しこりのようなものを感じる状態です。特に、生理前に症状が強くなり、生理が始まると和らぐという周期性が見られるのが特徴です。心配な場合は「乳腺外科」で診てもらうと安心です。さらに、見逃せないのがストレスや不安といった「心因性」の痛みです。検査をしても何の異常も見つからないのに、胸の圧迫感や息苦しさ、動悸が続く場合、それは心からのSOSサインかもしれません。パニック障害や不安障害の一症状として現れることもあり、この場合は「心療内科」が専門となります。このように、胸の痛みには多彩な顔があります。痛みの性質やタイミングをよく観察し、心臓以外の可能性も視野に入れることが、悩みの解決への近道となるのです。
心臓だけじゃない。女性を悩ます胸の痛みの正体