全身に発疹が出ているにもかかわらず、「かゆみ」が、ほとんど、あるいは、全くない。このような場合、それは、一般的な湿疹や、アレルギー性の発疹とは、異なる原因が、隠れている可能性を示唆しています。かゆみのない発疹は、その見た目や、他の随伴症状が、診断の、重要な手がかりとなります。まず、ウイルス感染症の中には、かゆみを、あまり伴わない発疹を、特徴とするものがあります。例えば、「伝染性紅斑(りんご病)」では、頬が、りんごのように赤くなった後、腕や足に、レース状の、特徴的な発疹が広がりますが、かゆみは、軽度か、ないことが多いです。また、梅毒の第二期に現れる「梅毒性ばら疹」も、体幹部を中心に、淡いピンク色の、かゆみのない発疹が、多数出現するのが特徴です。これらは、「内科」や「皮膚科」、「感染症科」での診断が必要です。次に、薬の副作用である「薬疹」の中にも、かゆみを伴わないタイプがあります。特に、体の同じ場所に、円形の赤い発疹が、繰り返し現れる「固定薬疹」は、原因となる薬を飲むたびに、同じ症状を繰り返します。皮膚科での、鑑別が重要です。さらに、血管の炎症が、皮膚に症状として現れる「皮膚血管炎」も、かゆみを伴わない、紫色の、少し盛り上がった発疹(紫斑)を、特徴とします。軽く押しても、色が消えないのが、内出血との違いです。この場合、関節痛や、腹痛、腎臓の障害といった、全身症状を伴うことがあり、「リウマチ・膠原病内科」や「腎臓内科」といった、専門科での、精査が不可欠です。また、ジベルばら色粃糠疹(ひこうしん)という、原因不明の皮膚疾患も、最初に、ヘラルドパッチと呼ばれる、楕円形の大きな発疹が現れ、その後、クリスマスツリーのように、体幹に、小さなピンク色の発疹が、多数出現しますが、かゆみは、軽度であることが多いです。このように、かゆみのない発疹は、その背景に、内科的な疾患や、特殊な皮膚病が、隠れているサインである可能性があります。安易に、様子を見るのではなく、まずは、皮膚科を受診し、その正体を、正確に突き止めてもらうことが、何よりも大切です。