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まとめ。腹痛で迷ったらどう考えどう行動すべきか
突然の腹痛に見舞われた時、多くの情報の中から、自分にとって最適な行動を選択するのは難しいものです。ここではこれまでの内容を総括し、「お腹が痛い」で悩んだ際に、どのように考え、どの診療科を目指すべきかの行動指針を整理します。まずStep 1として、最も重要なのが「痛みの強さと緊急性の判断」です。「これまでに経験したことのないような、我慢できないほどの激痛」「冷や汗や意識がもうろうとする症状を伴う」「突然の激痛が胸や背中にも広がる」。これらのサインは一刻を争う緊急疾患の可能性があります。ためらわずに直ちに救急車を呼んでください。次にStep 2として、「痛みの場所」を特定します。「みぞおち」の痛みなら胃や膵臓を考え消化器内科へ。「右上腹部」なら胆嚢を疑い消化器内科へ。「右下腹部」の痛みなら、虫垂炎を第一に考え「外科」へ。「下腹部」や「脇腹」の痛みなら、腸や泌尿器の病気を考えます。Step 3は、「腹痛以外の伴う症状」に注目することです。これが診療科選びの最大のヒントになります。「下痢や嘔吐、発熱」を伴うなら、感染性胃腸炎を疑い「内科・消化器内科」へ。「排尿時の痛みや血尿」があれば、尿路結石や膀胱炎を考え「泌尿器科」へ。女性で「不正出血やおりもの異常、月経との関連」があれば、「婦人科」の受診が不可欠です。Step 4として、これらのステップを踏んでも判断に迷う場合、あるいは症状がはっきりしない場合です。この場合は、まず幅広い内科系疾患の初期対応が可能である「内科」や「消化器内科」を最初の窓口として受診するのが最も合理的です。そこで詳しい問診と診察を受け、必要に応じて、外科や婦人科といった、より専門的な診療科へ紹介してもらうのがスムーズです。
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ヘルパンギーナは大人も子供にうつるのか
ヘルパンギーナは、非常に感染力が強いウイルス性疾患です。家庭内に、一人でも発症者が出ると、高い確率で、他の家族にも感染が広がります。特に、子どもが保育園などからもらってきたウイルスが、看病する親にうつってしまう、という「家庭内感染」は、大人がヘルパンギーナにかかる、最も一般的なシナリオです。ヘルパンギーナの原因となるエンテロウイルス属のウイルスは、主に3つの経路で、人から人へと感染します。第一の経路が「飛沫感染」です。感染者の咳やくしゃみ、会話などで飛び散る、ウイルスを含んだしぶき(飛沫)を、周りの人が鼻や口から吸い込むことで感染します。病気の初期、特に発熱や喉の痛みがある時期に、このリスクは高まります。第二の経路が「接触感染」です。感染者が触れたドアノブや、おもちゃ、タオルなどにウイルスが付着し、それを別の人が手で触れ、その手で自分の目や鼻、口を触ることによって、ウイルスが体内へ侵入します。そして、第三の、そして最も厄介な経路が「糞口感染(ふんこうかんせん)」です。感染者の便(うんち)の中には、大量のウイルスが排出されます。症状がすっかり治った後でも、ウイルスは便の中から、数週間にわたって排出され続けるのです。子どものおむつ交換の際に、処理をする親の手にウイルスが付着し、その手から感染が成立するケースは、非常に多いです。もちろん、この逆のパターン、すなわち、大人が先に感染し、子どもにうつしてしまう可能性も、十分にあり得ます。症状が重く出やすい大人が、無理をして出勤したりすると、職場や、公共交通機関で、知らず知らずのうちに、感染を広げてしまう危険性もあります。ヘルパンギーナの感染力は、症状がある急性期が最も強いですが、回復後も、しばらくは感染源となる可能性がある、ということを、常に念頭に置いておく必要があります。家庭内、そして社会での感染拡大を防ぐためには、後述する、基本的な感染対策を、家族全員で、徹底して実践することが、何よりも重要となります。
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まとめ。大人の全身発疹、診療科選びの思考プロセス
大人の体に、原因不明の全身性の発疹が現れた時、その不安の中で、冷静に、適切な行動をとるための「思考プロセス」を、ここで整理してみましょう。このステップに沿って考えることで、最適な診療科への道筋が、見えてくるはずです。Step 1:まず、緊急性を判断する!これが、最も重要です。発疹と共に、「息苦しさ」「顔や唇、喉の、急激な腫れ」「意識がもうろうとする」といった、アナフィラキシーを疑う症状があれば、ためらわずに、直ちに救急車を呼んでください。また、「高熱と共に、皮膚が火傷のように、ただれている」場合も、重症薬疹の可能性があり、緊急の対応が必要です。Step 2:「発熱」や「関節痛」の有無で、最初の窓口を決める。①発疹が主体で、全身症状は、ないか、あっても軽い場合 → まずは、皮膚の専門家である「皮膚科」を受診するのが、最も直接的で、確実です。②発疹に加えて、高熱や、体のあちこちの関節痛といった、強い全身症状がある場合 → 感染症や、膠原病といった、全身性の病気の可能性を考え、幅広い視点から診てくれる「一般内科」や「リウマチ・膠原病内科」を、最初の相談先とするのが、賢明です。Step 3:「発疹の見た目」と「きっかけ」に注目する。①蚊に刺されたような、盛り上がった発疹が、出たり消えたりする → 蕁麻疹を疑い、「皮膚科」または「アレルギー科」へ。②新しい薬を飲み始めてから、発疹が出た → 薬疹の可能性を考え、処方した医師に連絡するか、「皮膚科」を受診します。③水ぶくれ(水疱)を伴う発疹 → 水疱瘡や、帯状疱疹、ヘルペスなどの可能性があり、「皮膚科」または「内科」が専門です。**Step 4:「それでも判断に迷う場合」の行動。**どの症状も当てはまるようで、わからない。そんな時は、まず、かかりつけの「内科」医に相談するか、多くの皮膚疾患の初期対応が可能な「皮膚科」を、最初の窓口とするのが良いでしょう。そこで、専門的な評価が必要と判断されれば、責任を持って、最適な専門科へと、紹介してくれます。大人の全身発疹は、体からの、重要なメッセージです。そのメッセージを、正しく受け止め、専門家の助けを借りる、その一歩を踏み出す勇気が、あなたの健康を守るための、鍵となるのです。
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食欲不振に隠された危険な病気のサイン
夏の食欲不振は、多くの場合、夏バテによる、一過性のものですが、中には、その背後に、医療機関での治療が必要な、何らかの「病気」が隠れている可能性もあります。単なる夏バテと、危険な病気のサインを、見分けるための、いくつかの注意すべきポイントを知っておくことが、大切です。まず、食欲不振の「期間」と「程度」です。夏バテによる食欲不振は、通常、生活習慣の改善や、涼しくなるにつれて、徐々に回復していきます。しかし、「2週間以上、ほとんど食事が摂れない状態が続く」あるいは、「水分さえも、受け付けない」といった場合は、注意が必要です。特に、それに伴って、「明らかな体重減少」が見られる場合は、胃や、大腸、膵臓などの、消化器系の病気(胃炎、胃潰瘍、あるいは悪性腫瘍など)の可能性も、考えなければなりません。次に、食欲不振以外の、「伴う症状」です。もし、食欲不振に加えて、「強い腹痛」「嘔吐」「下痢(特に血便)」「38度以上の高熱」といった、急性の症状がある場合は、食中毒などの「感染性胃腸炎」や、虫垂炎、胆嚢炎といった、外科的な治療が必要な病気の可能性があります。また、「胸やけ」「みぞおちの痛み」が強い場合は、「逆流性食道炎」や「胃潰瘍」が、疑われます。さらに、全身の倦怠感が、異常に強く、体を動かすのも億劫で、気分の落ち込みや、不眠、興味の喪失といった、精神的な症状を伴う場合は、「うつ病」の身体症状として、食欲不振が現れている可能性も、十分に考えられます。夏バテの症状と、うつ病の症状は、非常に似ているため、鑑別が重要です。これらのように、食欲不振が、長期間続く、程度がひどい、あるいは、他の気になる症状を伴う場合は、「夏バテだから仕方ない」と、自己判断で放置せず、必ず、内科や、消化器内科、あるいは、心療内科といった、医療機関を受診し、専門医の診察を受けるようにしてください。
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まとめ。大人の口内炎と発熱は放置しないで
口内炎と発熱が、同時に現れた場合、それは、あなたの体が発している、見過ごしてはならない、重要な警告サインです。単なる「口の荒れ」と「風邪」が、偶然重なっただけ、と軽視してしまうと、その背後に隠れている、本当の原因を見逃し、手遅れになってしまう可能性も、ゼロではありません。ここで、大人が、口内炎と発熱で、医療機関を受診すべき理由と、その際の心構えを、改めて整理してみましょう。まず、受診の最大の目的は、「正確な診断」を受けることです。これまで見てきたように、その原因は、ヘルペスウイルスや、エンテロウイルスといった、特定のウイルス感染症から、ベーチェット病のような、全身性の自己免疫疾患まで、多岐にわたります。これらの病気は、それぞれ治療法が全く異なります。ウイルスが原因であれば抗ウイルス薬が、自己免疫疾患であればステロイドや免疫抑制薬が、必要となるかもしれません。正しい診断なくして、適切な治療はあり得ません。次に、受診することで、「つらい症状を、効果的に和らげる」ことができます。特に、ヘルペス性口内炎のように、早期に抗ウイルス薬を開始することで、重症化を防げる病気もあります。また、激しい痛みで、食事や水分が摂れない場合には、点滴による水分補給や、医療用の強力な鎮痛薬の処方など、医療機関でしか受けられない、専門的なサポートを得ることができます。そして、何よりも、「重篤な病気の見逃しを防ぐ」という、安全保障の側面があります。万が一、その症状が、血液の病気や、他の難病の、初期症状であった場合、早期に発見し、治療を開始することが、その後の経過を、大きく左右します。口内炎と発熱で、どの科に行けばよいか迷ったら、まずは、かかりつけの「内科」か、口の中の症状が強ければ「耳鼻咽喉科」や「歯科口腔外科」に、相談してください。あなたの体からのサインを、真摯に受け止め、専門家の助けを借りる、その一歩を踏み出す勇気が、あなたの健康を守るための、最も大切な鍵となるのです。
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まとめ。火傷で迷ったら、どう考え、どう行動すべきか
日常生活で、思いがけず火傷を負ってしまった時、痛みと動揺の中で、冷静に、そして適切に行動することが、その後の経過を大きく左右します。ここでは、これまでの内容を総括し、「火傷」をしてしまった際に、どのように考え、どの診療科を目指すべきかの、行動指針を整理します。Step 1:何よりもまず、応急処置!火傷をしたら、考えるよりも先に、行動です。直ちに、清潔な「水道水」の流水で、痛みが和らぐまで、最低でも15分以上、患部を十分に冷やし続けてください。これが、火傷の進行を防ぎ、痛みを和らげる、最も重要な初期治療です。Step 2:重症度を判断し、受診の必要性を見極める。冷却しながら、火傷の状態を観察します。「水ぶくれができている」「皮膚が白くなったり、黒くなったりしている」「火傷の範囲が、手のひらよりも大きい」。これらのサインがあれば、医療機関の受診が、絶対に必要です。また、子どもや高齢者、あるいは、顔や関節などの、特殊な部位の火傷も、専門医の診察を受けるべきです。Step 3:「何を重視するか」で、診療科を選ぶ。①一般的な火傷、感染が心配な場合 → 最も身近で、アクセスしやすい「皮膚科」が、適切な窓口です。初期治療と、感染管理を、的確に行ってくれます。②傷跡を、できるだけきれいに治したい、特に顔や関節の火傷 → 傷の修復と、整容(見た目)のスペシャリストである「形成外科」が、最も理想的な選択肢です。深い火傷や、植皮術が必要な場合も、形成外科が専門となります。③子どもの火傷で、どこに行けばよいか迷う場合 → まずは、かかりつけの「小児科」に相談しましょう。軽症であれば、そのまま処置してもらえますし、専門的な治療が必要と判断されれば、適切な皮膚科や形成外科へ、スムーズに紹介してくれます。**Step 4:「外科」や「整形外科」も、選択肢になる。**火傷の範囲が非常に広い場合や、他の怪我(骨折など)を合併している場合は、「外科」や「整形外科」でも、初期対応が可能です。火傷は、軽いものであっても、初期対応を誤ると、つらい傷跡を残すことがあります。自己判断で、間違った民間療法などに頼らず、この思考プロセスを参考に、早期に、専門家の助けを借りるようにしてください。
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火傷の重症度の見分け方と受診の目安
火傷を負った際、保護者や本人が、最も判断に迷うのが、「この火傷は、病院に行く必要があるのか?」という点でしょう。その判断の基準となるのが、火傷の「重症度」です。火傷の重症度は、主に、その「深さ」と「範囲(面積)」によって決まります。この二つの要素を、自分である程度、評価できるようになることが、適切な受診行動に繋がります。まず、火傷の「深さ」は、医学的に、I度、II度、III度の3段階に分類されます。I度熱傷は、最も浅い火傷で、皮膚の表面(表皮)だけが損傷した状態です。皮膚が赤くなり、ヒリヒリとした痛みを伴いますが、水ぶくれはできません。日焼けと同じ状態です。これは、多くの場合、十分な冷却と、保湿ケアで、数日で跡を残さずに治ります。II度熱傷は、皮膚の少し深い層(真皮)にまで、損傷が及んだ状態です。この深さの火傷の、最大の特徴が、「水ぶくれ(水疱)」ができることです。強い痛みを伴い、治るまでに2週間以上かかることもあります。II度は、さらに、浅いもの(浅達性II度)と、深いもの(深達性II度)に分けられ、後者は、傷跡が残りやすくなります。水ぶくれができた場合は、自己判断せず、医療機関を受診するのが原則です。III度熱傷は、最も深い火傷で、皮膚の全層、あるいは、その下の皮下組織まで、壊死してしまった状態です。皮膚は、白っぽく、あるいは黒く焦げたようになり、硬くなります。神経も破壊されてしまうため、逆に、痛みを感じなくなるのが特徴です。この深さの火傷は、自然に治ることはなく、皮膚移植などの手術が、絶対に必要となります。次に、火傷の「範囲」です。目安として、大人の手のひら1枚分の大きさが、体表面積の約1%に相当します。II度以上の火傷が、体表面積の10%(子どもの場合は5%)を超える場合は、入院治療が必要な、重症熱傷と判断されます。受診の目安をまとめると、①水ぶくれができている(II度以上)、②皮膚が白くなったり、黒くなったりしている(III度)、③火傷の範囲が、手のひらよりも大きい、④顔や、手足の指、関節、陰部といった、特殊な部位の火傷、⑤子どもや高齢者の火傷、⑥電気や化学薬品による火傷。これらのいずれかに当てはまる場合は、必ず、医療機関を受診するようにしてください。