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まとめ。喉の奥の赤いぶつぶつ、放置は禁物
喉の奥の、赤いぶつぶつ。それは、あなたの体が発している、見過ごしてはならない、重要な「サイン」です。その多くは、数日で治る、ウイルス性の風邪による、一過性のものですが、その背後には、時に、抗生物質による治療が必須な、細菌感染症や、あるいは、胃酸の逆流、さらには、稀ですが、悪性腫瘍といった、様々な原因が隠れている可能性があります。自己判断で、「ただの風邪だろう」と放置したり、市販薬だけで、ごまかし続けたりしていると、適切な治療の機会を逃し、症状が悪化したり、重篤な合併症を引き起こしたりする危険性も、ゼロではありません。ここで、喉の奥の、赤いぶつぶつに気づいた時の、行動指針を、改めて整理してみましょう。まず、Step 1として、自分の症状を、客観的に観察します。「高熱や、激しい痛みはあるか?」「ブツブツは、白い水ぶくれや、膿を伴っているか?」「舌や、体の皮膚にも、変化はないか?」「胸やけや、咳など、喉以外の症状はないか?」。これらのセルフチェックが、その後の、医療機関での説明に、非常に役立ちます。次に、Step 2として、その症状に応じて、適切な診療科を選びます。全身の風邪症状が強ければ「内科」へ。喉の局所症状が、突出していれば「耳鼻咽喉科」へ。胸やけなどを伴う、慢性的な症状であれば「消化器内科」を、検討します。そして、Step 3として、必ず、専門家である医師の診断を、仰いでください。特に、「つばも飲み込めないほどの激痛」「息苦しさを伴う」「症状が、2週間以上も続く」といった場合は、ためらわずに、医療機関を受診する必要があります。喉の奥の、小さな赤いぶつぶつは、あなたの健康状態を映し出す、鏡のようなものです。そのメッセージを、正しく受け止め、必要であれば、専門家の助けを借りる、その一歩を踏み出す勇気が、あなたの体を守るための、最も大切な行動と言えるでしょう。
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大人のヘルパンギーナ、何科を受診すべきか
大人が、ヘルパンギーナを疑う症状、すなわち、突然の高熱、強烈な喉の痛み、そして全身の倦怠感に襲われた時、どの診療科を受診すればよいのでしょうか。症状が、喉と全身にまたがるため、迷ってしまうこともあるでしょう。受診すべき診療科は、どの症状が、自分にとって最もつらいかによって、判断するのが良いでしょう。まず、最も一般的で、最初の窓口として適しているのが、かかりつけの「内科」です。大人のヘルパンギーナは、インフルエンザと見紛うほどの、高熱や頭痛、関節痛といった、強い「全身症状」を伴うことが多いため、内科医による、全身的な視点からの診察と管理が、非常に重要となります。内科では、問診と診察に加え、必要に応じてインフルエンザや、溶連菌感染症といった、他の疾患を除外するための迅速検査も行うことができます。そして、高熱や痛みといった、つらい全身症状を和らげるための、解熱鎮痛薬などを処方してくれます。一方で、全身症状もさることながら、とにかく「喉の痛みがひどすぎる」「食事も水分も全く摂れない」といったように、喉の局所症状が、極めて強い場合は、喉の専門家である「耳鼻咽喉科」を受診することも、非常に有効な選択肢です。耳鼻咽痕科では、ファイバースコープなどを用いて、喉の奥の状態を詳細に観察し、より正確な診断を下すことができます。また、最大のメリットは、ネブライザーという吸入器を使い、炎症を抑える薬剤や、局所麻酔薬を、痛みの強い患部に直接届ける治療が受けられる点です。これにより、一時的ではありますが、劇的に痛みを和らげ、水分補給のきっかけを作ることができる場合があります。どちらの科を受診しても、ヘルパンギーナそのものを治す特効薬はなく、治療が対症療法中心であることに変わりはありません。まずは、アクセスしやすい、かかりつけの内科に相談し、もし喉の痛みが耐え難いレベルであれば、耳鼻咽喉科の受診も検討する、という流れが、現実的かもしれません。
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傷跡をきれいに治すなら「形成外科」がベスト
「この火傷、跡が残らないように、できるだけきれいに治したい」。特に、顔や手、腕といった、普段から人目に触れやすい場所に火傷を負ってしまった場合、誰もがそう強く願うはずです。このような、「機能的な回復」と同時に、「見た目の美しさ(整容面)」を、最大限に重視して、火傷の治療を行ってくれるのが、「形成外科」です。形成外科は、体の表面に生じた、生まれつきの、あるいは怪我や手術によって生じた、組織の異常や変形、欠損などを、機能的、かつ整容的に、より正常に、より美しく修復することを専門とする、外科系の一分野です。火傷の治療において、形成外科医は、皮膚の構造や、血流、そして、傷が治っていくプロセス(創傷治癒)を熟知しており、将来的に、いかにして傷跡を目立たなくするか、という視点を、常に持って治療にあたります。特に、水ぶくれができるII度の火傷や、皮膚の深い層まで及ぶIII度の火傷の治療において、その専門性が発揮されます。形成外科では、最新の創傷被覆材(ドレッシング材)を駆使し、傷を乾燥させず、適度な潤いを保つ「湿潤療法(モイストヒーリング)」を、積極的に行います。これにより、痛みを軽減し、感染を防ぎ、上皮化(皮膚が再生すること)を、最適な環境で促進します。また、火傷が非常に深く、皮膚の再生が期待できない場合には、「植皮術(皮膚移植)」という、専門的な手術が必要となります。これは、太ももやお尻など、目立たない部分から、健康な皮膚を薄く採取し、火傷した部分に移植する手術です。形成外科医は、移植した皮膚が生着し、機能的にも、整容的にも、満足のいく結果が得られるように、非常に繊細な技術で、この手術を行います。さらに、形成外科の真価は、火傷が治った後の、長期的なケアにもあります。不幸にも、傷跡がひきつれてしまったり(瘢痕拘縮)、赤く盛り上がってしまったり(肥厚性瘢痕・ケロイド)した場合でも、それらを修正するための手術(Z形成術など)や、レーザー治療、シリコンジェルシートによる圧迫療法など、多彩な治療オプションを持っています。火傷の傷跡で、将来、後悔しないためにも、特に、顔や関節部分の火傷の場合は、最初から形成外科を受診することが、最も賢明な選択と言えるでしょう。
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喉のぶつぶつで病院へ、何科を受診すべきか
喉の奥に、赤いぶつぶつを見つけた時、それが、数日で消える、軽い風邪のようなものであれば、様子を見ることもできますが、痛みが強い、高熱を伴う、あるいは、長期間続いている、といった場合は、医療機関を受診すべきです。では、その際に、どの診療科を選ぶのが、最も適切なのでしょうか。受診すべき診療科は、主に、「内科」「耳鼻咽喉科」「消化器内科」の三つが、主な選択肢となります。それぞれの科の、役割と特徴を理解し、自分の症状に、最も合った科を選びましょう。まず、喉の痛みに加えて、「発熱」や、咳、鼻水、全身の倦怠感といった、いわゆる「風邪症状」が、主体である場合は、かかりつけの「内科」(子どもの場合は「小児科」)が、最初の窓口として、最も適しています。内科医は、全身を総合的に診察し、インフルエンザや、溶連菌感染症といった、全身性の感染症の診断と治療を、行うことができます。次に、喉の痛みや、違和感、あるいは、声がれといった、「喉の局所症状」が、他の症状に比べて、群を抜いて強い場合は、喉の専門家である「耳鼻咽喉科」が、最も専門性の高い選択肢です。耳鼻咽喉科では、ファイバースコープなどの、専門的な器具を使い、喉の奥の状態を、詳細に観察することができます。これにより、扁桃炎の重症度や、声帯の異常、あるいは、稀な腫瘍などを、正確に診断することが可能です。また、ネブライザー(吸入治療)など、専門的な処置で、つらい症状を、効果的に和らげることもできます。そして、熱や、明らかな感染症状はないのに、喉の赤いぶつぶつが、慢性的に続いており、特に、「胸やけ」や、喉のイガイガ感、長引く咳などを伴う場合は、逆流性食道炎の可能性を考え、「消化器内科」や「胃腸科」への相談も、視野に入れる必要があります。もし、どの科に行けばよいか、判断に迷う場合は、まずは、最も身近な、かかりつけの内科医に相談し、そこから、必要に応じて、専門科へ紹介してもらう、という流れが、スムーズで、安心でしょう。
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排尿トラブルを伴う腹痛は泌尿器科へ
腹痛と共に「排尿に関するトラブル」が見られる場合、その原因は腎臓や尿管、膀胱、尿道といった「泌尿器」にある可能性が高いです。このような症状で専門的な診療を受けられるのが「泌尿器科」です。泌尿器系の病気が原因の腹痛には、特徴的な随伴症状があります。まず最も頻度が高いのが「膀胱炎」です。女性に多く、大腸菌などの細菌が尿道から膀胱に侵入して炎症を起こす病気です。症状は、下腹部、特に恥骨の上のあたりに、シクシクとした痛みや重苦しい不快感が生じます。そしてそれに加えて「排尿時痛(おしっこの終わりにツーンと痛む)」「頻尿(トイレが近い)」「残尿感」「尿の濁り」といった、膀胱の刺激症状を伴うのが大きな特徴です。次に七転八倒するほどの激痛を引き起こすのが「尿路結石」です。これは腎臓で作られた石が尿管に詰まることで発症します。痛みは、片側の腰や背中から、脇腹、そして下腹部にかけて、突然、波のように押し寄せる、のたうち回るほどの激痛(疝痛発作)として現れます。痛みのあまり、吐き気や嘔吐、冷や汗を伴うことも少なくありません。また尿管の壁が石で傷つくため、尿に血が混じる「血尿」が見られるのも特徴です。さらに膀胱炎を放置したり尿管結石で尿の流れが滞ったりすると、細菌が腎臓にまで逆流して炎症を起こす「腎盂腎炎」を発症することがあります。腎盂腎炎では、下腹部痛だけでなく、感染が起きている側の背中や腰に強い痛みがあり、それに加えて、38.5度以上の高熱や悪寒、震えといった強い全身症状を伴います。放置すると敗血症という重篤な状態になる危険があるため、緊急の治療が必要です。
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子どもの火傷、小児科と専門科の連携
活発で、好奇心旺盛な子どもは、残念ながら、火傷をしやすい存在です。テーブルの上の熱いお茶をこぼしたり、炊飯器の蒸気に手をかざしたり、アイロンに触れてしまったりと、家庭内には、危険がたくさん潜んでいます。子どもが火傷をしてしまった時、保護者としては、パニックにならず、冷静に対応することが求められます。では、子どもの火傷では、何科を受診するのがベストなのでしょうか。まず、最も身近で、頼りになるのが、かかりつけの「小児科」です。特に、火傷の範囲が狭く、赤くなっているだけ、といった軽症の場合は、小児科で十分な初期対応が可能です。小児科医は、子どもの全身状態を把握する専門家であり、火傷の処置と同時に、脱水がないか、他に異常はないかなどを、総合的に診てくれます。また、子どもの扱いに慣れているため、怖がる子どもを、上手に安心させながら、処置を進めてくれるという、大きなメリットもあります。しかし、火傷の範囲が広い場合や、水ぶくれができている、あるいは、皮膚が白っぽくなっているような、深い火傷の場合は、より専門的な治療が必要となります。このような場合は、小児科医から、適切な専門科へ、紹介してもらうのが、最もスムーズな流れです。子どもの火傷治療の専門科は、大人と同様に、「皮膚科」または「形成外科」です。どちらの科も専門的な治療が可能ですが、特に、顔や手、関節部分の火傷や、将来の傷跡が心配な場合は、「形成外科」、それも、小児の形成外科に精通した医師のいる施設が、最も理想的です。子どもの皮膚は、大人に比べて薄く、デリケートであり、また、成長と共に、傷跡がどのように変化していくかを、予測しながら治療を行う必要があります。形成外科医は、これらの子どもの特性を、十分に理解した上で、治療計画を立ててくれます。また、広範囲の火傷では、入院が必要となることもありますが、そのような場合は、小児科と形成外科が、緊密に連携して、全身管理と、局所の治療にあたります。子どもの火傷は、初期対応が、その後の経過を大きく左右します。まずは、かかりつけの小児科に相談し、そこから、最適な専門医へと、繋いでもらうのが、最も安全で、確実な道筋です。
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病院で行われる検査と診断の流れ
口内炎と発熱で、医療機関を受診した場合、医師は、原因を特定するために、どのような診察や検査を行うのでしょうか。その一連の流れを知っておくことで、安心して診察に臨むことができます。診断の第一歩は、非常に詳細な「問診」から始まります。医師は、いつから、どのような症状(口内炎の痛み、熱の高さなど)があるか、口内炎の数や場所、食事や水分は摂れているか、そして、口以外の症状(皮膚の発疹、関節痛、目の症状など)はないか、といったことを、詳しく聞き取ります。また、最近、疲労やストレスがなかったか、家族や職場での感染症の流行状況なども、重要な情報となります。次に、「視診」です。医師は、ペンライトなどを使って、口の中の状態を、注意深く観察します。口内炎の形や大きさ、分布、そして、歯茎や扁桃腺の腫れの有無などを、チェックします。この視診による、特徴的な所見が、診断の大きな手がかりとなります。これらの問診と診察だけで、ヘルパンギーナや、手足口病、ヘルペス性口内炎といった、典型的なウイルス感染症の診断は、多くの場合可能です。しかし、診断を確定させるためや、他の病気との鑑別のために、追加の検査が行われることもあります。例えば、喉の奥の扁桃腺に、白い膿が付着している場合は、溶連菌感染症の可能性を考え、喉の粘液を採取して調べる「迅速検査」が行われることがあります。また、ヘルペスウイルスが疑われる場合は、口内炎の部分を綿棒でこすり、ウイルス抗原を検出する検査を行うこともあります。さらに、ベーチェット病などの、全身性の自己免疫疾患や、血液の病気が疑われる場合には、「血液検査」が、不可欠となります。血液検査では、白血球や赤血球、血小板の数、そしてCRPといった、炎症反応の程度を調べるだけでなく、それぞれの病気に特徴的な「自己抗体」の有無などを測定し、診断の確定に役立てます。これらの検査結果を、臨床症状と総合的に判断し、最終的な診断を下し、それぞれの病気に合った、治療方針が決定されるのです。
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痒くない発疹、その意外な原因とは
全身に発疹が出ているにもかかわらず、「かゆみ」が、ほとんど、あるいは、全くない。このような場合、それは、一般的な湿疹や、アレルギー性の発疹とは、異なる原因が、隠れている可能性を示唆しています。かゆみのない発疹は、その見た目や、他の随伴症状が、診断の、重要な手がかりとなります。まず、ウイルス感染症の中には、かゆみを、あまり伴わない発疹を、特徴とするものがあります。例えば、「伝染性紅斑(りんご病)」では、頬が、りんごのように赤くなった後、腕や足に、レース状の、特徴的な発疹が広がりますが、かゆみは、軽度か、ないことが多いです。また、梅毒の第二期に現れる「梅毒性ばら疹」も、体幹部を中心に、淡いピンク色の、かゆみのない発疹が、多数出現するのが特徴です。これらは、「内科」や「皮膚科」、「感染症科」での診断が必要です。次に、薬の副作用である「薬疹」の中にも、かゆみを伴わないタイプがあります。特に、体の同じ場所に、円形の赤い発疹が、繰り返し現れる「固定薬疹」は、原因となる薬を飲むたびに、同じ症状を繰り返します。皮膚科での、鑑別が重要です。さらに、血管の炎症が、皮膚に症状として現れる「皮膚血管炎」も、かゆみを伴わない、紫色の、少し盛り上がった発疹(紫斑)を、特徴とします。軽く押しても、色が消えないのが、内出血との違いです。この場合、関節痛や、腹痛、腎臓の障害といった、全身症状を伴うことがあり、「リウマチ・膠原病内科」や「腎臓内科」といった、専門科での、精査が不可欠です。また、ジベルばら色粃糠疹(ひこうしん)という、原因不明の皮膚疾患も、最初に、ヘラルドパッチと呼ばれる、楕円形の大きな発疹が現れ、その後、クリスマスツリーのように、体幹に、小さなピンク色の発疹が、多数出現しますが、かゆみは、軽度であることが多いです。このように、かゆみのない発疹は、その背景に、内科的な疾患や、特殊な皮膚病が、隠れているサインである可能性があります。安易に、様子を見るのではなく、まずは、皮膚科を受診し、その正体を、正確に突き止めてもらうことが、何よりも大切です。
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喉の奥の赤いぶつぶつ、その正体と主な原因
風邪をひいて喉が痛い時や、何となく喉に違和感がある時に、鏡で口の中を覗いてみると、喉の奥の壁や、のどちんこの周辺に、赤いブツブツとしたものができていて、不安になった経験はありませんか。この、喉の奥にできる赤いぶつぶつは、多くの場合、喉の粘膜に、何らかの「炎症」が起きているサインです。その原因は、一つではありません。最も多いのは、ウイルスや細菌による「感染症」です。風邪のウイルスや、インフルエンザウイルス、アデノウイルスなどが、喉の粘膜に感染すると、粘膜が充血し、リンパ組織が腫れることで、赤いぶつぶつとして見えることがあります。また、溶連菌などの細菌が、扁桃腺に感染した場合も、同様の所見が見られます。一方で、感染症以外にも、様々な原因が考えられます。例えば、胃酸が食道に逆流して、喉を刺激する「逆流性食道炎」も、喉の粘膜に、慢性的な炎症を引き起こし、赤いブツブツの原因となることがあります。また、喫煙や、アルコールの多飲、あるいは、声の出しすぎといった、物理的な刺激が、喉の粘膜を傷つけ、炎症を起こすことも少なくありません。稀ではありますが、口内炎の一種であるアフタ性口内炎や、アレルギー反応、そして、非常に稀ですが、悪性腫瘍(がん)の初期症状として、赤いぶつぶつが現れる可能性も、ゼロではありません。このように、喉の奥の赤いぶつぶつは、ありふれた症状でありながら、その背後には、様々な原因が潜んでいます。正しい対処をするためには、ブツブツの見た目だけでなく、痛みや発熱、咳といった、他にどのような症状があるかを、注意深く観察し、必要であれば、適切な医療機関を受診することが、何よりも大切です。
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ストレスが原因?機能性消化管疾患の可能性
腹痛で病院に行き、胃カメラや大腸カメラ、超音波検査など、一通りの検査をしても、「特に異常はありません」と言われる。しかし実際には、お腹の痛みや不快な症状が慢性的に続いている。このような、明らかな器質的な病変が見つからないにもかかわらず、腹部の症状に悩まされる状態は、「機能性消化管疾患」と呼ばれ、その背景には「ストレス」や「自律神経の乱れ」が深く関わっていると考えられています。この代表的な病気が、「過敏性腸症候群(IBS)」と「機能性ディスペプシア(FD)」です。これらの病気の診断と治療は、「消化器内科」や「胃腸科」、そして時には「心療内科」が専門となります。「過敏性腸症候群(IBS)」は、主に腸の機能異常によって起こります。ストレスを感じると、脳と腸が相互に影響し合う「脳腸相関」というメカニズムを介して、腸が知覚過敏になったり、運動異常を起こしたりします。その結果、腹痛と共に、下痢や便秘、あるいはその両方を交互に繰り返すといった、排便に関する異常が生じます。特に通勤電車の中や大事な会議の前など、特定の状況下で症状が悪化しやすいのが特徴です。「機能性ディスペプシア(FD)」は、主に胃の機能異常が原因です。胃の運動機能が低下し、食べたものがいつまでも胃の中に留まってしまったり(胃もたれ)、胃が十分に膨らむことができなかったり(早期飽満感)、あるいは胃酸などに対して胃の粘膜が過敏になったりすることで、みぞおちの痛みや食後の胃の張り、焼けるような感じといった、つらい症状を引き起こします。治療はまず生活習慣の見直しから始まります。十分な睡眠、適度な運動、バランスの取れた食事を心がけ、ストレスの原因を特定し、それを上手に回避・解消する方法を見つけることが基本です。薬物療法としては、それぞれの症状に応じた薬が用いられます。