ものもらいになってしまった時、普段コンタクトレンズを使用している人にとっては、その扱いが非常に悩ましい問題となります。「いつまでコンタクトを休めばいいのか」「治りかけなら、短時間だけなら大丈夫か」。その判断を誤ると、治るまでの期間が長引くだけでなく、角膜を傷つけるなど、より深刻な目のトラブルを引き起こす可能性があります。ものもらいが治るまでの期間は、「コンタクトレンズの使用は、完全に中止する」というのが、絶対的な鉄則です。その理由は、大きく分けて三つあります。第一に、「感染のリスク」です。細菌感染が原因である麦粒腫の場合、コンタクトレンズの表面や、レンズケースの中で、細菌がさらに増殖してしまう可能性があります。その汚染されたレンズを目に入れることは、自ら菌を目の中に運び込み、症状を悪化させる行為に他なりません。また、レンズを付け外しする際に、どうしても指が患部に触れてしまい、新たな雑菌を目に入れてしまうリスクも高まります。第二に、「角膜への負担」です。コンタクトレンズは、どれだけ性能の良いものであっても、角膜(黒目の部分)にとっては異物であり、酸素の供給を妨げるなど、少なからず負担をかけています。ものもらいで、まぶたが腫れている時は、目の周り全体の抵抗力が落ちている状態です。そんなデリケートな状態で、さらにコンタクトレンズによる負担をかけると、角膜に傷がついたり(角膜びらん)、角膜炎を併発したりする危険性が高まります。第三に、「薬の効果を妨げる」という問題です。ものもらいの治療の基本は、抗菌薬や抗炎症薬の「点眼薬(目薬)」です。しかし、コンタクトレンズを装着したまま点眼すると、薬剤がレンズに吸収されてしまい、患部に十分な量の薬が届かなかったり、あるいは、レンズに吸収された薬剤が、ゆっくりと放出されることで、副作用のリスクを高めたりすることがあります。では、いつからコンタクトレンズを再開できるのでしょうか。そのタイミングは、自己判断ではなく、必ず、眼科医の許可を得てからにしてください。医師が、まぶたの腫れや赤みが完全に引き、炎症が完全に治癒したと判断するまでは、たとえ症状が軽くなったように感じても、メガネで過ごすようにしましょう。不便に感じるかもしれませんが、その少しの我慢が、あなたの目の健康を、長期的に守ることに繋がるのです。