私が自分の体の異変に気づいたのは、35歳の誕生日を迎えた数日後のことでした。デスクワーク中に、胸の中央あたりがキューッと締め付けられるような、鈍い痛みを感じたのです。痛みは数分で治まりましたが、一度感じた恐怖は、鉛のように私の心にのしかかりました。「まだ若いのに、心臓の病気かもしれない」。その日から、私の頭の中はその不安でいっぱいになりました。インターネットで「胸の痛み 30代 女性」と検索しては、心筋梗塞や狭心症といった恐ろしい病名ばかりが目に飛び込み、余計に動悸が激しくなるという悪循環に陥っていました。夜、布団に入っても、小さな胸の違和感に過敏になり、眠れない日々が続きました。このままではいけない。もし本当に病気なら、早く見つけなければ。そう決心し、私は意を決して循環器内科のクリニックを予約しました。診察当日、医師に症状を伝えると、まずは心電図と心臓の超音波検査を行うことになりました。検査中は、何か異常が見つかるのではないかと、生きた心地がしませんでした。すべての検査を終え、再び診察室へ。医師はモニターに映し出された私の心臓を見せながら、「心臓の動きも血管もきれいですよ。心配するような異常は見当たりません」と穏やかに告げました。その言葉を聞いた瞬間、全身の力が抜け、涙が出そうになるのをこらえました。医師は続けて、「あなたの症状や生活習慣からすると、食道の病気、特に逆流性食道炎の可能性がありますね。一度、消化器内科で診てもらうといいかもしれません」とアドバイスをくれました。後日、消化器内科で胃カメラ検査を受けた結果、軽い逆流性食道炎と診断されました。処方された薬を飲むと、あれほど私を悩ませていた胸の痛みは、嘘のように消えていきました。この経験を通じて、私は自己判断の恐ろしさと、専門医に診てもらうことの重要性を痛感しました。原因がわかったことで得られた安心感は、何物にも代えがたいものでした。
胸の痛みに怯えた日々。私が病院で得た本当の安心