「この火傷、跡が残らないように、できるだけきれいに治したい」。特に、顔や手、腕といった、普段から人目に触れやすい場所に火傷を負ってしまった場合、誰もがそう強く願うはずです。このような、「機能的な回復」と同時に、「見た目の美しさ(整容面)」を、最大限に重視して、火傷の治療を行ってくれるのが、「形成外科」です。形成外科は、体の表面に生じた、生まれつきの、あるいは怪我や手術によって生じた、組織の異常や変形、欠損などを、機能的、かつ整容的に、より正常に、より美しく修復することを専門とする、外科系の一分野です。火傷の治療において、形成外科医は、皮膚の構造や、血流、そして、傷が治っていくプロセス(創傷治癒)を熟知しており、将来的に、いかにして傷跡を目立たなくするか、という視点を、常に持って治療にあたります。特に、水ぶくれができるII度の火傷や、皮膚の深い層まで及ぶIII度の火傷の治療において、その専門性が発揮されます。形成外科では、最新の創傷被覆材(ドレッシング材)を駆使し、傷を乾燥させず、適度な潤いを保つ「湿潤療法(モイストヒーリング)」を、積極的に行います。これにより、痛みを軽減し、感染を防ぎ、上皮化(皮膚が再生すること)を、最適な環境で促進します。また、火傷が非常に深く、皮膚の再生が期待できない場合には、「植皮術(皮膚移植)」という、専門的な手術が必要となります。これは、太ももやお尻など、目立たない部分から、健康な皮膚を薄く採取し、火傷した部分に移植する手術です。形成外科医は、移植した皮膚が生着し、機能的にも、整容的にも、満足のいく結果が得られるように、非常に繊細な技術で、この手術を行います。さらに、形成外科の真価は、火傷が治った後の、長期的なケアにもあります。不幸にも、傷跡がひきつれてしまったり(瘢痕拘縮)、赤く盛り上がってしまったり(肥厚性瘢痕・ケロイド)した場合でも、それらを修正するための手術(Z形成術など)や、レーザー治療、シリコンジェルシートによる圧迫療法など、多彩な治療オプションを持っています。火傷の傷跡で、将来、後悔しないためにも、特に、顔や関節部分の火傷の場合は、最初から形成外科を受診することが、最も賢明な選択と言えるでしょう。