口内炎と発熱で、医療機関を受診した場合、医師は、原因を特定するために、どのような診察や検査を行うのでしょうか。その一連の流れを知っておくことで、安心して診察に臨むことができます。診断の第一歩は、非常に詳細な「問診」から始まります。医師は、いつから、どのような症状(口内炎の痛み、熱の高さなど)があるか、口内炎の数や場所、食事や水分は摂れているか、そして、口以外の症状(皮膚の発疹、関節痛、目の症状など)はないか、といったことを、詳しく聞き取ります。また、最近、疲労やストレスがなかったか、家族や職場での感染症の流行状況なども、重要な情報となります。次に、「視診」です。医師は、ペンライトなどを使って、口の中の状態を、注意深く観察します。口内炎の形や大きさ、分布、そして、歯茎や扁桃腺の腫れの有無などを、チェックします。この視診による、特徴的な所見が、診断の大きな手がかりとなります。これらの問診と診察だけで、ヘルパンギーナや、手足口病、ヘルペス性口内炎といった、典型的なウイルス感染症の診断は、多くの場合可能です。しかし、診断を確定させるためや、他の病気との鑑別のために、追加の検査が行われることもあります。例えば、喉の奥の扁桃腺に、白い膿が付着している場合は、溶連菌感染症の可能性を考え、喉の粘液を採取して調べる「迅速検査」が行われることがあります。また、ヘルペスウイルスが疑われる場合は、口内炎の部分を綿棒でこすり、ウイルス抗原を検出する検査を行うこともあります。さらに、ベーチェット病などの、全身性の自己免疫疾患や、血液の病気が疑われる場合には、「血液検査」が、不可欠となります。血液検査では、白血球や赤血球、血小板の数、そしてCRPといった、炎症反応の程度を調べるだけでなく、それぞれの病気に特徴的な「自己抗体」の有無などを測定し、診断の確定に役立てます。これらの検査結果を、臨床症状と総合的に判断し、最終的な診断を下し、それぞれの病気に合った、治療方針が決定されるのです。