「ものもらい」と一括りにされがちな、まぶたの腫れや痛み、どちらのタイプの「ものもらい」なのかによって、治るまでの期間や、治療法も大きく変わってくるのです。自分の症状がどちらのタイプに近いのかを知ることは、今後の経過を予測し、正しく対処するための、重要な手がかりとなります。まず、多くの人が「ものもらい」としてイメージするのが、「麦粒腫(ばくりゅうしゅ)」です。これは、まつ毛の根元にある、汗を出す腺(モル腺)や、皮脂を出す腺(ツァイス腺)に、黄色ブドウ球菌などの細菌が感染して起こる、いわば「まぶたの、おでき」や「ニキビ」のようなものです。主な症状は、まぶたの縁が赤く腫れ上がり、ズキズキとした痛みや、押した時の痛み(圧痛)、そしてかゆみを伴うことです。炎症が進行すると、腫れた部分の中心に、膿を持った白い点(膿点)が見えるようになります。この麦粒腫は、急性期の炎症であるため、治るまでの期間は比較的短いのが特徴です。軽症であれば、抗菌薬の目薬や軟膏による治療で、三日から一週間程度で治癒します。膿が溜まって腫れがひどくなった場合でも、自然に破れて膿が出るか、眼科で小さく切開して膿を排出すれば、その後は急速に快方に向かいます。一方、もう一つのタイプが「霰粒腫(さんりゅうしゅ)」です。こちらは、まぶたの内側にある、油分(脂質)を分泌して、涙の蒸発を防ぐ「マイボーム腺」の出口が詰まってしまうことが原因で起こります。詰まった腺の中に、分泌物である脂が溜まり、肉芽腫(にくげしゅ)という、しこりのような塊を形成する、無菌性の炎症です。霰粒腫の主な症状は、麦粒腫のような強い痛みはなく、まぶたの腫れや、まぶたの中にできた「コリコリとしたしこり」、そして目にゴミが入ったような異物感(ゴロゴロ感)です。この霰粒腫は、慢性的な経過をたどることが多く、治るまでの期間は、麦粒腫よりも長くなる傾向にあります。小さなものであれば、数週間から数ヶ月かけて、自然に吸収されていくこともありますが、しこりが大きい場合や、そこに細菌が二次感染して、急性霰粒腫(きゅうせいさんりゅうしゅ)という、麦粒腫のような強い痛みを伴う状態になると、治療が長引くことも少なくありません。このように、あなたのまぶたの不調が、痛みを伴う「麦粒腫」なのか、しこりが主体の「霰粒腫」なのかによって、治るまでの期間は、大きく変わってくるのです。