小さなお子様のまぶたが、ある日突然、赤くぷっくりと腫れ上がっている。そんな時、親御さんは、心配でたまらない気持ちになるでしょう。子供の「ものもらい」は、大人と同様に、主に細菌感染による「麦粒腫」と、マイボーム腺の詰まりによる「霰粒腫」に分けられますが、その治るまでの期間や、家庭でのケアには、子供特有の注意点が存在します。まず、治るまでの期間ですが、子供の麦粒腫は、大人と同様に、抗菌薬の目薬や軟膏を使用すれば、おおむね一週間以内には治癒します。子供は新陳代謝が活発なため、むしろ大人よりも回復が早い傾向にあります。しかし、問題となるのが、家庭でのケアです。子供は、大人に比べて、かゆみや違和感を我慢することが非常に困難です。そのため、無意識のうちに、汚れた手で、腫れたまぶたをゴシゴシとこすってしまうことが頻繁にあります。この行為が、症状を悪化させる最大の原因となります。手に付着した新たな雑菌が、患部に入り込んで炎症を広げたり、あるいは、こすった手で反対の目を触ることで、感染が飛び火してしまったりすることもあります。これを防ぐためには、まず、お子様の爪を、常に短く切っておくことが重要です。そして、できるだけ患部に触らないように、根気よく言い聞かせると同時に、こまめな手洗いを習慣づけさせましょう。目薬や軟膏を嫌がるお子様も多いですが、これは治療の根幹であるため、おもちゃで気を引いたり、寝ている間にそっと塗ったりと、工夫を凝らして、必ず医師の指示通りに使用してください。また、霰粒腫の場合、大人では手術が選択されるような大きなものでも、子供の場合は、体の成長と共に、自然に吸収されていく可能性も十分にあります。そのため、医師は、すぐに手術を選択するのではなく、数ヶ月から、時には一年以上の長いスパンで、じっくりと経過を観察することが多いです。親としては、やきもきするかもしれませんが、焦らず、医師の指示に従って、根気よく治療を続けることが大切です。子供のものもらいは、病気そのものよりも、いかに「触らせないか」という、日々のケアこそが、早く、そしてきれいに治すための、最大の鍵となるのです。