全ての始まりは、右目の上まぶたに感じた、ほんの些細な違和感でした。最初は、少し重たいような、ゴロゴロするような感覚。しかし、翌朝になると、まぶたは明らかに腫れ上がり、鏡に映った自分の顔は、まるでボクシングの試合後のようでした。痛みはそれほどでもない。私は、よくある「ものもらい」だろうと、高を括っていました。ドラッグストアで、抗菌成分入りの市販の目薬を買い、数日間、真面目に点眼を続けました。しかし、私の期待とは裏腹に、腫れは一向に引く気配がありません。それどころか、まぶたの中に、パチンコ玉のような、コリコリとした「しこり」があるのが、はっきりと感じられるようになってきたのです。一週間が経っても、症状は改善しませんでした。さすがに不安になった私は、ついに眼科の門を叩きました。医師の診断は、私が思っていた「麦粒腫」ではなく、「霰粒腫」というものでした。マイボーム腺という、油分を出す腺が詰まって、しこりができてしまった状態だ、と。医師は、「自然に吸収されることも多いですから、しばらく点眼で様子を見ましょう」と言いました。その言葉を信じて、処方されたステロイドの目薬を続けましたが、私のまぶたのしこりは、驚くほど頑固でした。一ヶ月が経っても、その存在感は変わらず、見た目にも、まぶたがぽっこりと腫れているのが分かるため、人と会うのが少し億劫になっていました。そして、受診から二ヶ月後、医師は私に、最終的な選択肢を提示しました。「この大きさだと、自然に消えるのは難しいかもしれません。切開して、中の塊を取り出す手術をしますか?」。手術、という言葉に、私は一瞬怯みました。しかし、この鬱陶しいしこりと、これから先もずっと付き合っていくことを考えると、決断は早い方が良い、と思いました。手術は、局所麻酔で行われ、時間にしてわずか十分程度。まぶたの裏側を少しだけ切開し、ピンセットで、溜まっていた脂肪の塊を掻き出すというものでした。麻酔が切れた後は、少し痛みましたが、翌日には、あれほど私を悩ませた、まぶたの腫れとしこりは、嘘のように消え去っていました。この経験を通じて私が学んだのは、自己判断の危険性と、専門医を信頼することの重要性です。たかが「ものもらい」と侮るなかれ。その背後には、時に、長い付き合いを強いられる、しぶとい敵が潜んでいるのです。
私が経験した長引くものもらいとの戦い