30代の半ば、仕事で重要なプロジェクトを抱えていた私は、多少の喉の痛みや微熱を無視して働き続けていました。それが大きな間違いの始まりでした。1週間ほど経ってようやく風邪が治りかけたある日の夜、風呂上がりに腕の裏側に小さな赤いポツポツがあるのに気づきました。最初は「あせもかな」程度に考えていましたが、翌朝、鏡を見た私は絶句しました。顔から足の先まで、まるで地図のような巨大な赤い盛り上がりが無数に広がっていたのです。痒みは筆舌に尽くしがたいもので、爪を立ててかきむしりたい衝動を抑えるだけで精一杯でした。慌てて皮膚科へ駆け込むと、医師は私の顔を見るなり「最近、ひどい風邪を引きませんでしたか?」と尋ねました。その通りだと答えると、これは風邪による身体的ストレスと免疫力の低下が招いた、典型的な大人の蕁麻疹であるとの診断を受けました。医師の説明によれば、私の体は風邪という侵入者との戦いでボロボロになっており、武器であるはずの免疫細胞が、味方であるはずの自分の皮膚を攻撃し始めている状態だったのです。処方された抗ヒスタミン薬を飲み始めると、数時間で痒みは和らぎましたが、薬の効果が切れると再び赤い斑点が浮き上がってきました。完治するまでの2週間、私は自分の生活を根本から見直すことを余儀なくされました。まず、アルコールと刺激物は一切断ち、寝る前のスマートフォンもやめました。お風呂も熱い湯船は避け、ぬるま湯のシャワーだけにしました。この期間に私が痛感したのは、大人の体は「治った」と思ってからが本当の勝負だということです。熱が引いても、体内ではまだ情報の混乱が続いており、それが皮膚という一番外側の組織に「混乱の証」として現れていたのです。仕事の遅れを取り戻そうと焦る気持ちが、さらに自律神経を逆撫でし、蕁麻疹を長引かせていたことにも気づきました。今回の経験で、私は自分の体を一つの精密機械のように慈しむことを学びました。蕁麻疹は、私の焦燥感を鎮めるために現れた、体からの優しい、けれど厳しいストップサインだったのだと今は確信しています。もし今、風邪の後に謎の痒みに悩んでいる大人がいるなら、どうかその足を止めてください。体は休むことを切望しているのです。