30代後半のある冬の日、私は人生で経験したことのないような喉の違和感で目を覚ましました。最初は「少し乾燥したかな」程度に考えていましたが、数時間後には唾を飲み込むことさえ躊躇うほどの激痛に変わり、体温を測ると39度近い熱が出ていました。慌てて洗面所へ行き、鏡の前で口を大きく開けてみたとき、私は自分の喉以上に、舌の状態に絶句しました。そこには、普段の健康なピンク色とはかけ離れた、まるで完熟したイチゴのように真っ赤でブツブツとした自分の舌があったのです。ネットで検索すると、子供の溶連菌感染症の症状としてイチゴ舌という言葉が出てきましたが、大人の自分にそんなことが起きるのかという不安が押し寄せました。這うようにして近所の内科へ向かうと、待合室の椅子に座っているのも辛いほどの倦怠感に襲われました。診察室で先生に舌を見せると、一目で「これは典型的な溶連菌ですね」と告げられ、喉を綿棒で拭う検査を受けました。10分もしないうちに陽性の結果が出て、その日から10日間という長い抗菌薬の服用生活が始まりました。先生からは、大人が溶連菌にかかると症状が重くなりやすいこと、そして何より、症状が消えても薬を最後まで飲み切らなければ、後で腎臓などに悪い影響が出る可能性があることを厳しく、しかし丁寧に説明されました。飲み始めて2日もすると、あれほど痛かった喉は劇的に楽になり、熱も平熱に戻りました。しかし、舌の赤みとブツブツはなかなか消えず、食事の際に少し刺激のあるものを食べるとヒリヒリと痛みました。鏡を見るたびに自分の舌の異様さに落ち込みましたが、これも菌と免疫が戦った跡なのだと言い聞かせ、薄味の和食を少しずつ食べるようにしました。療養期間中は仕事も休み、とにかく眠ることに専念しました。最終的に舌の表面の皮が薄く剥けるような感覚とともに、元の滑らかな状態に戻ったのは、発症から1週間以上が経ってからのことでした。今回の経験で痛感したのは、自分の体を過信してはいけないということです。忙しさを理由に不摂生を重ねていた時期だったからこそ、溶連菌という敵につけ入る隙を与えてしまったのだと感じています。あの真っ赤なイチゴ舌は、私の体からの「もう限界だよ」という叫びだったのかもしれません。完治した今では、毎朝鏡で舌の状態をチェックし、自分の健康をバロメーターで測るような習慣がつきました。健康は当たり前のものではなく、日々の意識で作っていくものなのだと、痛烈に学んだ10日間でした。