多くの患者さんを診てきた理学療法士の立場から言えば、朝起きるとかかとが痛いという悩みを持つ方のほとんどが、足の裏だけでなくふくらはぎから足首にかけての筋肉がガチガチに固まっています。かかとの痛みはあくまで結果であり、その原因は脚全体の柔軟性の低下にあることが非常に多いのです。特に就寝中は足首が下を向いた状態で固定されやすく、これによって足底筋膜やアキレス腱が短縮した状態で固まってしまいます。この状態でいきなり床に足をついて全体重をかけることは、冷えて固まったゴムを急激に引き伸ばすのと同じで、組織を傷つけるのは明白です。そこで私が最もお勧めしているのは、朝起きて「立ち上がる前」の3分間ケアです。まず、目が覚めたらすぐに立ち上がらず、ベッドの中で膝を伸ばしたまま座ります。そして、タオルを足の指の付け根に引っ掛け、両手で手前側にゆっくりと引いてください。足首を90度以上に曲げるイメージで30秒キープします。これにより、足底筋膜とアキレス腱を安全に予熱することができます。次に、足の指を自分の手を使って一本ずつ大きく反らせる動作を繰り返します。これも筋膜の柔軟性を高めるのに極めて有効です。これらの動作を行ってからゆっくりと立ち上がるだけで、最初の一歩目の痛みは格段に軽減されるはずです。日中のセルフケアとしては、青竹踏みやゴルフボール転がしも効果的ですが、やりすぎは禁物です。強い痛みを感じるまで押してしまうと、逆に炎症を悪化させる恐れがあります。また、ふくらはぎのストレッチも欠かせません。壁に手をついて片足を後ろに下げ、かかとを床に押し付けたまま膝を伸ばす古典的なアキレス腱伸ばしは、足底筋膜炎の予防と改善における黄金律です。一日のうちで筋肉が最も温まっている入浴中や入浴後に、左右それぞれ3回ずつ行うことを習慣にしてください。かかとの痛みは、急激な負荷の蓄積による「オーバーユース」の側面が強い疾患です。日頃から足のアーチを意識した歩き方を心がけ、足裏を一つの臓器のように丁寧に扱う意識を持つことが大切です。ストレッチは即効性のある魔法ではありませんが、1ヶ月、2ヶ月と継続することで、確実に足裏の組織はしなやかさを取り戻します。朝の時間を憂鬱な痛みではなく、今日という一日を支える足のコンディションを確認する前向きな時間に変えていきましょう。
理学療法士が教える朝のかかとの痛みを劇的に和らげるストレッチ術