アデノウイルスは呼吸器や目だけでなく、消化器にも牙を剥きます。私の場合、それは突然の激しい嘔吐と水のような下痢から始まりました。当初はノロウイルスや食中毒を疑いましたが、病院での便検査の結果、アデノウイルスによる感染性胃腸炎であることが判明しました。このウイルスの厄介なところは、胃腸症状に加えて、大人の場合は高熱がセットでやってくることです。吐き気が治まったかと思えば、今度は激しい寒気とともに熱が上がり、全身の倦怠感で指一本動かせない状態になりました。トイレとベッドを往復するだけの2日間、私は自分の体内から全ての水分が失われていくような感覚に陥りました。市販の経口補水液を飲もうとしても、その匂いだけで吐き気が再燃し、ついには意識が遠のき始めました。家族に付き添われて救急外来へ向かい、点滴を2リットル受けることでようやく一息つくことができましたが、医師からは「もう少し遅ければ腎機能に影響が出るところでした」と警告されました。大人のアデノウイルス胃腸炎は、子供よりも体力が削られる傾向にあり、特に一人暮らしの場合などは、初期の対応を誤ると命の危険さえあります。吐き気が落ち着いた後も、下痢は1週間近く続き、消化の良いものを食べてもすぐに排出されてしまうため、体力は極限まで低下しました。この病態において最も重要なのは、無理に食べようとせず、水分と電解質の補給に特化することです。また、アデノウイルスは便の中に長期間残るため、トイレの後の手洗いはもちろん、便座やレバーの消毒を怠ると、一気に家庭内アウトブレイクを招きます。私の不注意で、その後、同居していた高齢の母にもうつしてしまい、彼女も入院一歩手前まで悪化させてしまったことは、今でも深い後悔として残っています。大人の胃腸炎型アデノウイルスは、単なる「お腹の風邪」ではありません。それは全身を蝕む炎症疾患であり、周囲への感染源としてのリスクも極めて高いのです。回復後も2週間程度はウイルスが便から排出され続けるという事実を知り、私は公共の場でのトイレ利用にも神経を使うようになりました。あの時の全身を絞り出すような苦しみと、家族への申し訳なさは、今の私の健康管理の原点となっています。水分が摂れないと感じたら、プライドを捨てて医療機関での点滴を求めること。そして、自分は移動するウイルス兵器であるという自覚を持つこと。これが、大人のアデノウイルス胃腸炎を乗り切るための唯一のサバイバル術なのです。