「少し胃がもたれているだけだろう」という根拠のない自信が、まさか緊急手術に繋がるとは夢にも思いませんでした。ある土曜日の夜、みぞおちのあたりに重苦しい違和感を覚えたのが始まりでした。私は元々胃腸が弱かったため、いつもの消化不良だと決めつけ、市販の胃薬を飲んで早めに就寝しました。しかし、翌朝になっても痛みは引かず、それどころか時間の経過とともに痛みの中心が少しずつ右斜め下へと移動していくのを感じました。この「痛みの移動」こそが、虫垂炎の典型的なサインであるとは当時の私は知りませんでした。日曜日のため、開いている診療科をネットで必死に探しましたが、内科に行くべきか、それともお腹を切り開くイメージがある外科に行くべきか判断がつかず、結局「明日まで待とう」と判断を先送りにしてしまいました。月曜日の朝、痛みは歩くたびに響くほどの激痛に変わり、冷や汗を流しながら近所の総合内科を受診しました。医師は私のお腹を数箇所押し、手を離した瞬間に走る鋭い痛みを確認すると、即座に「これは典型的な虫垂炎の症状です。すぐに外科で精密検査を受けてください」と告げました。紹介された消化器外科でCT検査を受けた結果、虫垂はパンパンに腫れ上がり、破裂寸前の状態でした。そのまま即入院、緊急手術という怒涛の展開となりました。術後、医師から「もう少し遅ければ腹膜炎を起こして1ヶ月以上の入院が必要だった」と聞かされ、自分の判断の甘さに背筋が凍る思いがしました。この体験から私が得た教訓は、腹痛において「専門科が分からないなら、まずは迷わず内科、できれば設備の整った総合病院へ行くべき」という点です。また、単なる胃痛と侮らず、場所が変わったり強まったりする痛みは異常事態であるという認識を持つことの重要性を痛感しました。医療機関を受診する際、外科は敷居が高いと感じてしまいますが、実際には内科と外科は密接に連携しており、正しい診断さえ下れば適切な治療へとスムーズに導いてくれます。あの日、もし私が「何科に行けばいいか分からないから」とさらに数時間放置していたら、今の私はなかったかもしれません。自分の体から発せられるSOSに対して、診療科の名称という言葉の壁を乗り越えて、迅速に行動すること。それが、最悪のシナリオを回避するための唯一にして最大の手段であることを、私は一生忘れないでしょう。